本日は午前中から、文化放送『グリーンフェスタ』(土曜放送)のスタッフなどなど含め、総員十数名で檜原村へ。

 檜原村は東京都唯一の村で、緑豊かな場所。なんと東京自体の18分の1がこの村で、都民の吸う酸素の半分以上を檜原村の森がまかなっていると村長が言っていたくらいなのだが、都民はその事実をほとんど知らない。

 この檜原村と俺の番組は連動して環境運動を進めており、しかもその運動はどんどん変貌を遂げて大きくなっているのである。

 今回は、森の中にある看板(「山火事注意」とか「ゴミ捨てるな」など)をまずは見に行く企画。
 R25PLANTEDでおなじみ、天才デザイナー尾原(史和)さんを連れていってるところがミソで、俺が檜原村に“メッセージが目に飛び込んできて、しかも景観を乱さない看板を番組で作り直したい!”と勝手に言い、さらに勝手に尾原さんに“ボランティアだが力を貸してくれないか”と交渉し、承諾どころか「そういう仕事こそやりがいがあります!」と熱い返事をもらった上でのツアーなのだった。

 ロケバスもエコツーリストの壱岐さんが手配してくれた天ぷら油で走る車。いい気分で檜原村に着くと、坂本村長と森のレンジャーの皆さんに出迎えられ、早速看板の現状を見ることに。

 すると、檜原村スタッフが素晴らしく柔軟で、木の下に落ちてたりする「山火事注意!」の看板などを見つける度に、「撤去しましょう!」と言って取ってしまうのである。
 官公庁的な面倒な手続きより、有効性をとる姿勢に感動した俺も斜面に飛び降りて撤去に参加(笑)。
 最後は村長までもが斜面に貼り付いて撤去作業に加わった。

 さて、現場を見た尾原さんがこれからどんな素材、どんな塗料、どんな色と形で新しい看板を作ってくれるか楽しみだ。
 「野生動物にエサをあげると、その動物の野性が失われてしまいます。あげないでください」というメッセージ含めて数種類。
 もちろんお金はないので、デザインがあがったら俺も塗る。
 そして檜原村に持っていって自分で設置する。


 その看板が、日本の森の看板の定番になるといいと思う。


 実はこの楽しいボランティアは、日本の森のデザインを変えるプロジェクトだというわけである。

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 佐藤優『国家論』(NHKブックス)が読み始めたら止まらなかった。こんなに熱中した本も珍しい。大推薦だ。

 そもそも、自らを「右翼・保守主義者」と規定する佐藤優の出現がどうめざましかったかといえば、彼以前に影響力のあった右派が全員ことごとく古めかしいものに見えてしまったのである。
 その圧倒的な知識と論理構成、そして熱い魂によって。

 「国家の暴走に対抗する!」というのが帯文。
 暴力装置である国家の行き過ぎた運動をとめるのは「社会」であるという佐藤は、最終的に社会が強ければ国家も強くなるという。
 その最終地点が違うのみで、佐藤のあとの論理はアナキズムなどを強く想起させ、逆に言えば、なぜ左翼の言葉がこのように刺激的には届かなくなったのかと考えることしきりであった。


 同時期に松岡(正剛)さんが『誰も知らない世界と日本のまちがい』を出していて、これがまた資本主義と国家をめぐる広範で核心的な考察である。
 先日紹介した『脳と日本人』でも後半、松岡さんは“資本主義と国民国家がすんなり結びつくのがどうも解せない”というようなことを言っており、この問題は佐藤優『国家論』でも複数回“イギリスで偶発的に国家と資本主義が合体した”(正確な引用ではないが)という強調の形で取り上げられている。

 つまり、国家と資本主義の結合は必然ではないのだ。
 だが、一度つながるとそれは離れようがなくなる。 

 日本文化を誰よりもよく、深く見ることの出来る松岡さんからもまた、国家への疑いが明確に説かれ、ひとつの型しかないような資本主義の席捲への憂いが現れていることを(そして、同時にその不満が「民族」という落とし穴に回収されるべきではないという注意を佐藤、松岡両氏は喚起してくれている)、俺はどーんと重く受け止めた。

 とにかく、両方、とても面白い本です。
 読んで下さい。